- 2023年12月刊行
- 定価:本体4,400円+税
- ISBN:978-4-905208-14-3
- 出版社:リベルタス出版
- 仕様:A5判 上製 192 頁
松丸啓子
ヤスパースの精神医学から実存哲学への道程、その起源と深化を探り、〈実存〉とは何かを問う!
何故ヤスパースは、精神医学から哲学へと転じたのか―その理由を探るには、精神医学時代の主著である『精神病理学総論』を紐解き、その「精神医学の哲学」を明らかにする必要がある。そして、その探究は、哲学においても、精神医学においても、重要な意義を持つ。
『精神病理学総論』において確立した〈了解〉の次元では、〈了解できないもの〉の一つとして〈実存〉が示唆されたが、その「〈実存〉とは何か」という問いこそが、ヤスパースを哲学の道へと歩ませた。したがって、ヤスパースの実存哲学の起源と深化を辿るにあたって、本書での論考は有意義なものとなろう。一方、「精神医学の哲学」は、現在の精神医学に対しても〈方法論的自覚〉を喚起し、〈全体としての人間〉として患者を捉える〈実存的コミュニケーション〉の可能性と必要性を訴えかける点で、大きな意義を持ち続けている。その意味において、本書は、その論考を通じて精神医学が常に人間全体を問題にする実践であることを確認し、『DSM 精神疾患の診断・統計マニュアル』至上主義が進みつつあるように見える現代精神医学の在り方に一石を投じる。
著者略歴
松丸啓子(まつまる けいこ)
東北大学大学院文学研究科博士課程後期三年の課程修了
博士(文学)
現在、高千穂大学人間科学部教授
主要著書
『精神医学と哲学の出会い―脳と心の精神病理』(共著、玉川大学出版部)
『脳科学と哲学の出会い―脳・生命・心』(共著、玉川大学出版部)
『道徳教育の理論と実践』(共著、樹村房)
『ハイデガー事典』(分担執筆、昭和堂)
「M・ブーバーの〈対話〉とK・ヤスパースの〈実存的コミュニケーション〉との比較研究」(『教育哲学研究』一九九三巻六七号、教育哲学会)